医療ドラマの出産シーンとか、出産本を読むとこんなことが書いてあります。
- 夫が立会いをしても、あたふたするだけの人もいる
- 普段とは違う口調で妻に怒られる
- 何もできなくたっていい。出産を見て経験することが重要
- 声がけをしましょう
- マッサージで痛みをやわらげましょう
- 体調が悪くなっちゃうお父さんもいるんですよ(笑)
夫も立会いした方がいいの?一応その場に居る程度?
夫の立ち会いって、あんまりプラスなイメージで書いてなかったりするんですよね。
妊娠後期に入ったときに僕もパパママ学級に参加して、クリニックから軽い説明を受けたけど、ほとんど知識がないまま陣痛を迎えました。
「その場にはプロの助産師や医者がいるのだから夫ができることはあんまりないよね。せめて邪魔にならないように、でもできることはやろう。」
そんな気持ちで挑んだ立ち会い出産の様子を伝えてみようと思います。
僕みたいにドキドキ不安に感じているお父さんの参考になるといいな...!
出産に立ち会った13時間
予定日は2月末でした。当日になっても全く普段と変わらず近所を一緒に散歩して過ごしていました。
ちなみに「いきなり破水して汚しちゃうと迷惑だから...」ということで、臨月に入ってからは飲食店やスーパーの店内には入らず、気分転換のために公園を歩く程度でした。
予定日を過ぎた3月1日の夜。「あ、なんかお腹ちょっと痛いかも~」と軽い痛みが訪れる妻。タイミングもまばらだし、 前駆陣痛(臨月にくる痛み)ぽいので在宅で様子見することに。
3月1日の夜間は痛みに耐えつつ、妻はあまり眠れないまま3月2日に。
午前中も様子見。その日の16時に陣痛の感覚が10分以内になりました。
妻「10分以内になってきたけどクリニックに連絡したほうがいいかなー?もうちょっと様子見たほうがいいかなー?」
僕「早めでもいいから連絡してみよう」
一応連絡するタイミングは決まっているのだけど、いざその時になるとちょっと遠慮しちゃうんですよね。ちなみに電話口での様子も検知したいから、どんなに辛くても妻本人が電話することになっていました。確かに夫が「なんか痛そうです。とても痛そうですぅぅ」と話してもうまく伝わらなさそうですもんね。
ではクリニックに来てください。ということで僕が車を運転して妻をクリニックへと連れていきました。
駐車場で15分くらい待っていると「まだ産まれる感じじゃないようだし、夫を呼ぶタイミングになったら助産師さんが教えてくれるから一旦家に戻っていいよー」と妻から連絡があり、僕は一旦帰宅することに。
クリニックからの帰り道でのんきに味噌カツを食べて帰りました(笑)
家に戻ってからは家事を済ませて、妻からお呼びがかかるまで待機することに。
でもいつ呼ばれるかわからない...。深夜0時?2時?朝方?
「寝過ごしているうちに産まれました」なんて事になったらシャレにならない。
スマートフォンのマナーを解除して着信音量を最大にした上で、2時間ごとにアラームを掛けて23時に就寝。(普段は3時くらいに寝るのだけど、早い時間に眠るほうが熟睡しきらずに起きれるかなと)
深夜1時ごろ。妻からの連絡が来て「22:45に破水したけどまだ産まれはしないよ。痛みは増しているけど」とのこと。
その後は気になってしまって二度寝できなくなっちゃいました。持っていくカメラのバッテリーやSDの整理をしてソワソワする気持ちをしずめながら待ちます。
3時「看護師さんの巡回は来ていないけど、痛みが強くなってきたからひとまず駐車場まで来てほしい」と妻からの連絡を受けて、深夜のドライブ。
わぁいよいよか。産まれるのか。パパになるのか。ドキドキしながら冷静にドライブ。
すぐには呼ばれない雰囲気だったので、クリニック近くのコンビニに立ち寄って、意味もなくツナマヨおにぎりを買って車内でもぐもぐ。コンビニの駐車場でしばらく待機。
4時。まだ連絡が来ないので、クリニックの駐車場に移動して待機。
4時30分。ついに「クリニック内に入っていいよ」と連絡が来たので、妻の待つLDRへ。
※ LDRは陣痛→出産→回復までを行うための部屋。産むまでの部屋の移動がないので気楽。
出産用ベッドの隣には新生児用のベッドもスタンバイされていました。
このまま朝方には産まれちゃう?と思いきや、ここからが長かった。
出産までの流れは...
- 陣痛が定期的に来る
- 赤ちゃんが出られるくらいに子宮口が広がるのを待つ
- 子宮口が広がったら、いきんで押し出す
という感じ。
ドラマで見ると1から2の「痛いぃ~」のシーンはすぐに終わって、3の出産シーンになるけど、現実は1と2がめっちゃ長い。
ひたすら続く陣痛
深夜4時に僕がクリニックに入ったときは、妻も立ち上がって話をしていたんだけど、その後痛みが増してきてベッドで横になって耐えるしかない状態。
痛みの波が収まっている瞬間は話すこともできるけど、痛いときはもだえ苦しんでる。
あっという間に夜が明けて外が明るくなりました。
朝8時。妻の朝食が部屋に届く。
妻は痛みで食欲がなくて、フルーツとゼリーを食べただけ。無理して食べると痛みで気持ち悪くなったときに吐いちゃうかもしれないから。
残りは僕がいただきました。塩分少なめの仕上げで、まさに素材の味。体に良い食事って、こういうやつなんだよね。
このあたりから痛みが激しくなったようで「うぐぐぐ。痛いー痛いー」と悶える妻。妻のこんな姿は見たことない。というかここまで痛みに苦しむ人をリアルに見たことがない。
痛くても麻酔を打つわけにはいかないし、ただ出産の時が来るまで耐えるしか無いわけです。ナースコールを押しても解決しないしなぁ。
そんな時に夫の僕ができる事は、腰のマッサージ、テニスボールを押し当てる、水分補給の手伝い、声がけ。あとは記録用に写真を撮るだけですね。
ちなみに、この時間から夕方に産まれるまで、妻の腰のマッサージをし続けました。左手にテニスボールを持ってお尻に強く当てて、右手で腰を押し続ける。腕がパンパンです。
1時間に1回くらい、お腹にセンサーを取り付けて何かを測ります。
左手で妻にテニスボールを押し当てながら、スマホで調べてみる。
どうやらこのモニターには赤ちゃんの心拍と子宮の張り具合が表示されている様子。子宮収縮の波形と赤ちゃんの心拍を見ることで、陣痛の進み具合や赤ちゃんが苦しんでいないかが分かるっぽいです。
右の数値が子宮収縮。数分ごとに数値がぐいーっと上がります。そのたびに半端ない痛みに耐える妻。
「痛いぃぃぃ。痛いぃぃぃ!!」
(これホラー映画で見たことある。暗い地下室でじわじわと強烈な拷問を受けるシーンだ。)
「痛いよねー頑張ってるよね。赤ちゃんも頑張ってるよ!あっ数値が下がったからもう痛みの山を超えたよ」声がけのパターンが思いつかなくて、僕は妻に同じことを何度も言っていました。
この時点で妻は2日間ほとんど眠れていません。陣痛の間に目を閉じると一瞬記憶が飛ぶけど、すぐに痛みで起こされるという...。苦しいよね。
そういう僕も睡眠不足で眠い。地面に膝立ちで左手にテニスボールを持って妻のお尻に当てる。あー頭がふわふわするぅ。
そのままベッドに寄りかかって2分くらい眠っていたけど、妻の叫びで起きる僕。
お腹の痛みはあるのに、なかなか赤ちゃんが下がって来ない。ということで陣痛促進剤を点滴することになりました。
あーこれで産まれるようになるかも...!と僕は思うわけですが、それどころじゃなくなった。
促進剤で一層強まる痛み。
病室のドアを超えて、同じフロア中に響き渡るくらいの大声でもだえる妻。(さらにこの後4時間くらい続きます)
赤ちゃんの体がお尻の内側に当たるらしく、痛いとのこと。
出産後に聞いてみたら「木の棒を突っ込まれてかき回されている感じだった。痛みで気絶するかと思った」...らしいです。
最初は少量の点滴で様子をみて、しばらくしたら徐々に投与量を増やしていきます。
「あー痛いよねぇ。でももうちょっと増やせるかなー?頑張れるかなー?」と看護師さんが妻に問うわけですが、痛くてもYESの返事しかできません。
痛さが強まらないと出産のゴールまでたどり着けないんですもん。
助産師さんのアドバイスに従って、僕も一緒に「ふっふぅ~~ふっふぅ~~」の呼吸法をして、妻の呼吸を整えて痛みを逃すお手伝い。
妻が大声を出せるように、僕も一緒になって声を出していました。
ミラーレスカメラや360度カメラ動画用カメラを持っていったけど、ほとんどの時間は両手で妻の介抱です。呑気に撮影する暇なんてほとんどなかった。
だけど、出産の記録係という役割が僕に任されている!
痛みで叫んでいる妻の顔の前にカメラを持っていって、数枚撮って励ましに戻ります。
こんなに痛い様子を撮影していていいのか...?と心が痛んだけど、やっぱり撮っておいて良かった。
定期的に内診が行われました。
その時だけは、僕はカーテン越しの部屋の隅で待機するよう指示されます。
妻にマッサージをし続けている僕にとって、この5分だけが休憩タイム。
ソファーに腰掛けて目を閉じて一瞬眠ります。
カーテン越しに「痛いー!」という声が聴こえてくるけど「助産師さん。後は任せましたぁ。」という思いで僕のスイッチはオフ状態です(笑)
とはいえ、妻は痛みで眠れないし休憩も無いのですよね...。
妻の痛みに耐える声を聞いて、カーテン裏で何度か泣きそうになりました。
記録のために動画も撮りましたが、めちゃやばい。
この叫びを聞いても明るく励まし続けられる助産師さんはすごい。
16時いきみスタイルへ
陣痛促進剤を打ち始めてから4時間が経ちました。
ここでやっとクライマックスへ突入です。
やっといきみOKの許可が出たので、陣痛に合わせて踏ん張る妻。
複数の助産師さんと、お医者さんに囲まれていきんでいる妻の様子を見ていると、命をかけて産むってこういうことなんだなと。
ここまでくると、僕はうちわで仰ぎながら応援することしかできません。(妻の手を握ろうかと思ったけど、すでにベッドのバーが壊れそうになるくらい握りしめていたのでそっとしておいた)
そして、いきみ始めてから40分。
「産まれますよぉ~!」という助産師さんの声が聞こえ、ついに出てきました!
「あっ、いる!いるよぉ~出てきたよぉ。産まれたよぉ。」
僕が最初にでた言葉がこんな感じでした。
「よく頑張ったねぇ。やっと会えたねぇ」
生まれた瞬間は感動で涙が出てくるかと思ってたけど、実際は涙は出ませんでした。
すごい産まれた産まれた!の興奮と、妻の陣痛がやっと終わるんだという安心感、そして自身の疲れでなんだか感情が混ざってしまったみたいです。
出産後の処置をしてもらって、LDRから入院用の個室へ移動。
ほとんど眠れていないはずの妻は意外にも元気でした。さっきまで痛みに耐えていたのが嘘のように「明日の面会時間はね~」と普通に僕と話をしていたんです。すごい。
そのまま20時ごろまで夫婦二人で過ごして、僕はひとり帰宅。帰宅するとすぐにベッドに倒れて翌朝まで12時間眠り続けました。
立会いを経験してみて思ったこと
- 妻が痛みに耐える時間はとてつもなく長い。想像よりもかなり長かった。
- 夫がいると多少は役に立つ。お尻をテニスボールで押したり、マッサージしたり、水分補給のペットボトルを差し出したり。単に応援する以外のところで働ける。長時間の陣痛中ずっと助産師さんが付きっきりになるわけではないから、雑用ができる近親者がいるのは重要だと思う。
- (産む母親に比べたら全然だけど)僕もめっちゃ疲れた。12時間マッサージし続けたせいで全身筋肉痛になった。
- 「出産時は動物園みたいに生臭い」っていう記述を見たけど、全然匂いはしなかった。出産時の出血は少量だったらしいのでそれもあるかも。
- 妻が怒ることがなかった。テレビだと「違う!ここを押して!」とか強い口調が出ることが多いイメージだけど、そういうのは全く無かった。終わってから妻から「立ち会って励ましてくれてありがとう」っていう感謝のLINEが届いて感動た。
- 様子を撮影しておいて良かった。思い出にってこともあるけど、今後どこかのタイミングで見返して、妻への感謝の気持ちがその都度高まると思う。
出産の壮絶さを最前線で見守れたことに感謝です。